汚泥処理の浄化槽は 汚泥が90%減少するアクタックの浄化槽システム 常識を覆す特許取得の浄化槽システム
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埼玉県秩父市
千葉県食肉公社

 

 農業集落排水では全国で初めて、ディスポーザ排水の受け入れを想定した生ごみ粉砕液送分解消滅装置や、 固形脱窒材による簡易3次処理装置などを設置し、その効果を十分に発揮してきた埼玉県秩父市の太田上地区処理施設。 その先進的な取り組みについては、本誌でもかつて「視察レポート」において詳細を報じたが、同施設では今夏、 余剰汚泥量の大幅削減を目標に更なる改良が加えられ、再稼動後も順調な状況を維持している。 導入された新技術とは、通性嫌気性菌による排水処理システム。 こちらも下水道・集落排水の分野では全国初の採用事例となるもので、 同施設に関心を寄せ視察に訪れる集排関係者の数も急増している。 本誌記者も再び現場を訪問、この新処理システムの概要について聞いた。
 秩父市で初となる農業集落排水事業、太田上地区(平成8年度採択、計画人口590人・戸数126戸)の処理施設 「太田上集落排水処理センター」が完成、運転開始したのは14年2月1日。 本誌でもその直後の同年4月に「視察レポート」(第497号・巻頭企画)で詳報したが、この施設では水処理施設本体の前後に、 生ごみ粉砕液送分解消滅システム(し渣消滅装置)、 固形脱窒材のよる簡易な脱窒・脱リン3次処理装置という2つの斬新な技術が集排施設としては全国で初めて採用され、 大いに効果を発揮してきた。 そして今回、市が改良の手を加えたのが、JARUS-XIV型の水処理本体部分。 同じく全国初となる技術「通性嫌気性菌排水処理システム」の採用することを決め、今年8月に改良工事を実施し、現在、 その導入効果の観察に入っている。 市の最大の狙いは、水処理に伴い発生する余剰汚泥量の削減。 し澄消滅装置の導入に伴い、微細目スクリーン(目幅2mm)を併設してほとんどの固形分を掻き上げているため、 もともと余剰汚泥の発生は極力抑えられているが、発生量ゼロという一段上の目標に向け、 いっそうの機能的進化をめざした取り組みだ。
 この「通性嫌気性菌排水処理システム」(商標:アクタックシステム)は、 山梨県甲府市に本社を置く(株)アクタック(中澤正志社長)の所有する技術。 食肉工場排水などの高濃度排水、民間のコミプラ施設などでは実績があるものの、下水道や集排施設では初採用となるため、 同社は埼玉県内の民間施設に設置したシステムで1年にわたりデータを収集し市側に提示するとともに、 昨年11月には市担当職員が直接、県外への視察に出向くなどした上で、慎重に採用を決めたという。 生活排水処理に伴い発生する余剰汚泥は、流入した有機物を捕食・分解するバクテリアの過剰増殖によるもの。 集排施設などで多く用いられる活性汚泥法では、酸素呼吸する好気性バクテリアの働きに多くを依存しているが、 この好気性バクテリアは、浄化能力(有機物を水・炭酸ガスヘに分解する能力)が高いゆえに、必然的に増殖能力・速度も高く、 比例して発生汚泥量も増大することになる。 これに対し、通性嫌気性菌処理システムで主力として働くのは、酸素以外の物質(硝酸、亜硝酸など)で呼吸するバクテリア。 これら硝酸呼吸等をする菌や微好気性菌を総じて「通性嫌気性菌」と名付けている。 通性嫌気性菌は、酸素呼吸をする菌に比べ、増殖能力は5%程度にすぎず、つまり、余剰汚泥も5%程度しか発生しない計算となる。 また、殻を持つ菌種が発生しにくいため、わずかに発生した余剰汚泥も食物連鎖(自己消化)によって減容化することが容易となる。 このように、従来の活性汚泥法の主役であった好気性微生物の代わりに、非好気性の菌群を多く発生させて有機物を分解させ、 汚泥の発生そのものを抑制し、少量発生した汚泥も可能な限り自己消化で減容するというのが同システムの特徴。 こうした基本的な仕組みは、かつて本誌で紹介した佐賀市・ 元相応地区農業集落排水施設(第527号・視察レポート)の事例と非常に似通っているように思われる。





 太田上地区処理施設では今年8月上旬、こうしたシステムの働きを具体化するための改良工事を実施。 といっても、ハード的には配管類の一部変更・追加を行った程度であり、大がかりな機器類の追加設置を行う必要はない。 また、工事完了後の立ち上げに際しては、通性嫌気性菌の菌体と電子受容体をタンクリーリーで搬送し、約10m3ほど投入。 あとは運転操作の変更により通性嫌気性菌の増殖を促進する環境を与えることにより、 上述のような効果を得ることができている。
 具体的な改良点としては、これまで曝気槽に設置されていた3基の曝気ブロワ(うち常用2基)のうち、 1基の配管を汚泥濃縮槽と汚泥貯留槽に振り向けて、曝気槽は2基のブロワを交互運転するよう変更。 また、もともと汚泥貯留槽に設けていたブロワは、原水ポンプ槽と流量調整槽の曝気用に転用。 このようにブロワの流用と配管経路の変更1追加によって、 5槽(原水ポンプ槽、流量調整槽、曝気槽、汚泥濃縮槽、汚泥貯留槽)すべてでエアレーションが可能な状況としている。 また、曝気槽では非好気性の環境を作るため、従来は毎時16分だった曝気時間を毎時5分に短縮するとともに、 エア量も半分程度に絞り、トータルでの曝気強度を以前の1/5〜1/6に抑制している。 その他の水槽では常時エアレーションして微好気状態を保持するが、「消化槽」の役割を果たす汚泥濃縮槽および貯留槽では、 1日24時間のうち最も流入量の少ない深夜の4時間ほど曝気を停めて汚泥を沈降させる。 ここで生じた上澄みは、通性嫌気性菌の活性を促す、硝酸や亜硝酸などを多く含有した重要な物質(電子受容体)であり、 新設した返送用塩ビ管を通じて自然流下で原水ポンプ槽に返送される(毎日2m3程度)。 この改良運転を始めるまで、同処理施設では2ヵ月に1回の頻度で余剰汚泥の引き抜きを行っていたが、 7月末に行った引き抜きを最後に、改良後は目立った汚泥の増加は見られないという。 また、臭気の軽減にも大きく寄与しており、「脱臭装置を動かす必要もないのでは」(市担当者)とのこと。 実際、処理施設周辺や建屋内部だけでなく、汚水を鼻先に近づけてもまったくと言っていいほど臭気は感じられない。 処理水質については、直近の測定結果でBODl.5mg/1、SS5mg/1未満、T-N4mg/1、T-P1.6mg/1と、 工事実施前の高度な水準を回復するまでになっている。 現在、曝気槽内部のMLSSは約4000mg/1の数字を示すが、アクタック担当者によると、 7000mg/1程度まで上昇したのちに安定する見通し、としている。
 供用開始から2年10ヵ月。 地区内の126戸のうち約120戸が集排への接続を終え、流入水量は計画どおりの順調な伸びを示してきた。 また、その利便性がロコミで伝わり、すでに30世帯程度の台所でディスポーザが設置されるに至っている。 こうしたディスポーザ排水を受け入れ、 他のし漬とともに分解処理するし漬除去消滅装置(アースクリーンシステム)も引き続き順調に運転中。 また、後段に設けた脱窒材による3次処理槽も同様に、これまでどおりの窒素・リン除去性能を発揮している。
 市ではこのほかにも、生物脱臭装置やインターネット網を利用した監視管理システムなど、 多彩な最新技術と創意工夫を盛り込み、今後の集排事業のモデル地区とすべく、整備に力を注いできたが、 さらに目を引く新処理システムが導入されたとあって、同施設への視察を希望する声も増加してきた。 市町村や都道府県の集排担当者だけでなく、大学や民間企業など、多い時は月に5団体以上が同地区を訪れるようになった。 市農林課の集排担当者は「このシステムの導入で汚泥の発生状況が今後どうなるのか、 具体的にどの程度のコスト縮減効果があったのか、もう少し時間の経過を待たなければ判断できませんが」としながらも、 「少しでも当市の事例を参考にしてもらえるなら」と、視察申し入れには積極的に対応しているという。

 

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